4年くらい前の夏に、
「もう社会人だからご飯奢ってあげるよ」と連絡が入り、
高校生のとき付き合っていた方に会った。
俺はまだ学生で、時間だけは持て余っていたので関西から高速バスで東京まで会いに行った。飯代より高くついた。
付き合っていた当時も、2歳年上だったからか精神的に強くて、なんでもできて、
好きと言うよりは「こうなりたい」という憧れの方が強かった。
19時頃に待ち合わせ場所に着くと、
いかにもキャリアウーマンみたいなビシッとした髪型とシャキッとした服装の彼女がいた。
俺は朝からバスがついてやることもなく、ネットカフェで寝てた影響で半分が潰れたパーマ頭に、誰かの中国土産でもらったよくわかんないドラえもんのTシャツを着ていた。
会って、中国版ドラえもんに触れられることもなく、「久しぶり〜、いつの間にか成人したんだね〜」なんて軽く話して、予約してくれてあった居酒屋に入った。
なんとなく軽い緊張感のある中、
「あそこのゲーセン潰れてコンビニになったらしいよ」とか「あいついま地元で美容師してるよ」とか思い出話みたいなことをしてだいぶ馴染んできて、ほろ酔い状態になって今ある就職の不安を聞いてもらった。
そしたら、彼女が「国境なき医師団に毎月1万円募金しているんだ。自動引き落としだから忘れているけど」と教えてくれた。「社会人生活は思ったよりうまくいかないし、これが誰かの役に立ってるのかなって思うけど、ときどき届くDMを見ると、知らないどこかで誰かを救っていると思うとなんか気が紛れるんだ。」と話してくれた。
俺も自分で大人になったと思ってても、
全然追いつけてなかったし、
まだ目標の人であり続けていた。
その日、学生の俺には毎月1万は無理だから
働き出したらそうしようって心に決めた。
社会人になった春、
はじめての給料日に国境なき医師団のホームページを開いて、自動引き落としの登録をした。
その自動引き落としは1ヶ月後に解除した。
1年で12万で10年で120万と毎日計算していて
俺には忘れることなんてできなかった。
きっと彼女はやさしい人間だからできたことで、
俺はやさしい人間になりたかっただけなんだなって気づいた。
時々、「俺は誰かの役に立っているか」と考えさせられる。
その度に、酒を飲んで寝る。