一日中映画を観ていた。
朝、耐え難い暑さと蝉の鳴き声で目を覚まし、特に何もすることがない一日だと気づく。
いつもなら冷房をつけ、もう一度心地よい眠りにつくところだけど、今日は何故か目が冴えていた。
おもむろに最低限の身だしなみを整え、レンタルビデオショップまで車を走らせる。
近所の野球場からは応援の声とXJAPANの紅のメロディが聴こえてきて、夏の甲子園予選が始まっているんだなとか、どうでもいいことを考える。
最近は映画もネットコンテンツの時代だが、何故か使う気になれない。
どれを観ようかと店内を小一時間彷徨う時間が、実は一番好きだからかもしれない。
借りたのは、映画通が絶賛したり考察したりするような小難しいテーマの作品ではなく、誰もが知るようなシリーズ物の続編だったり、好きな俳優が主演というだけの作品だったりした。
それからずっと、昼食を摂るのも忘れて映画を観ていた。
別に熱中していたわけでもない。
借りた作品はどれも個人的には退屈で、何が退屈だったのかさえ思い出せない。
でもそんな作品を観ていると、不思議な感覚に陥ることがある。
幼い頃、実家の庭に寝転がって流れる雲と青空だけをただじっと眺めていると、まるで宙に浮いている、青空の一部になっていくような気持ちになった。
そんな感覚から抜け出せず、もう夕方になってしまった。
最後に観た映画は、好きな俳優が主人公だった。
理屈っぽいクライム映画で、特筆して魅かれるものは無かった。
でも、最後のシーンで主人公が放ったセリフだけが頭に残っていた。
America is a not country. It's just a business.
別にアメリカに詳しくないから、そのセリフの意味なんて大して理解できない。
だけど、ひどく響いた。
間違いなくこの作品の一番の見せ場で、何ならこのセリフのために作られた映画だと思った。
たった一つの、日本人でも理解できる簡単なセリフだったが、作品の価値が大きく変わった気がした。
「あなたもきっと騙される!」なんてキャッチコピーの映画より、よっぽど騙された気分だった。
映画と人生は似ている。
人の数だけストーリーがある。
でもエンドロールはいつだって同じで退屈だ。
だから、エンドロールで観客が席を立たないようにするには、余韻に浸れるほどの見せ場をストーリーに用意する必要がある。
悲劇か喜劇か、日常か非日常か、それらに関係なく、見せ場は重要だ。
見せ場の大きさも、数も、質も、それぞれだけど。
自分の見せ場はいつだろうな。
もしかしてもう終わってしまったかな。
まさか今じゃないだろうな。
そんなどうでもいいことを考えながら過ごしている日曜日の夕方。