『もしもし?』
「おう、今何してた」
『何って、テレビ観ながら寝てるけど』
「起きてるやん、起きてしもうてるやん」
『ゴチのクビメンバーが誰かだけ知りたくて』
「ゴールデンタイムのバラエティなんか観んなよ、中学生か」
『普段は観てないよ』
「余計タチ悪いわ、コナンの黒ずくめ編だけ読んでんのと一緒だぞ」
『分からん、用は?』
「いや、ここ2週間会ってねえから部屋行こうかと思って」
『……は?』
「どうした」
『いや、男に誘われたのは初めてでちょっと動揺してる』
「カモフラージュで9年も女と付き合わんて、コップ用意しとけ」
「じゃあ、えーーーーと」
『カルロスゴーンと孟晩舟に』
「杯を献ずる気にならんな…」
『じゃあこれから生まれてくる日本の子供たちに』
「あー献杯」
「いきなりだが、俺は黒い真実に気づいてしまった」
『へぇ』
「最近あるだろあの、皆がこぞってインスタとかツイッターにあげてるやつ」
『ネットやらないんじゃなかったのか』
「話題に置いてかれない程度にはやるに決まってんだろ」
『あぁそうですか』
「あれだよ、あのー、何かモバゲーのアバターみたいなやつ」
『あー、あーあーあー』
『ゼペットな』
「それそれ」
「細けーーーな」
『中の人で呼称するな』
「うるさいうるさい」
『それで?』
「話題になってるもんはやっとけって話で、彼女とやったわけだよ」
『はいはい』
「そしたら彼女のアバターが全っ然似てねえし可愛くもねーわけよ」
『へぇー』
「何でかなーって考えてて、さっき英語講師の人と飲んでる時にふと真実に辿り着いてしまったわけよ」
『あーなるほどね』
「何だと思う?」
『へーすご』
「おい」
『へぇ………あぁ?………あー、いやちょっと』
「なんだよ」
『モバゲーのアバターって単語聞いて、高校時代のモバゲーアカウントの黒い歴史に辿り着いてた』
「HN?」
『そう、きつすぎ…』
「ここで供養しよう」
『……$fake$』
「うーーーーーーーーわ、いかちーーーーーーーーーーーーーー、懲役モンだなそれは、由来は?」
『本名のアナグラムの英訳』
「ドルでサンドイッチしたその心は」
『紛れも無い厨二病』
『あー恥ず、それで何だっけ?』
「そうだよ!いつのまにかPriority取られてたわ、ゼペットの話!」
『あぁ、彼女のアバターが全く似てないし可愛く無い理由』
「そうそう」
『彼女そんなに不細工なのか』
「逆だよ逆、可愛すぎるんだよ」
『…へぇ』
「あからさまに声のトーン下げんな、惚気じゃねえ」
『具体的に』
「正確に言うと、可愛いじゃなくて特徴の無い美人なんだよな」
『うーん…?』
「あーいうアバターってのは、顔のパーツを抽象的に大袈裟にして似せにいくもんだろ?だから似るし、ブスも可愛くなる」
『デフォルメってやつか』
「そうそう、でも例えばの話だけど、新垣結衣をデフォルメして本物より可愛く"描け"って言われて、遂行できる奴がこの世にいると思うか?」
『いるわけないな、新垣結衣は完璧だから』
「そうなんだよ、もちろん特徴のある美人は似せられるぜ?綾瀬はるかはアゴがアレだし、北川景子や麻生久美子は目がアレだし」
『そうだな』
「でも?」
『あー、本物より可愛くはない?』
「Congratulation」
『うざいな…で結論は?』
「アバターを積極的に使うネットの女は信用すんな」
『誰への説法なんだよ』
「俺以外の全ての人類」
『君と比べたら全員釈迦だよ…』
「あと一日働いたら三連休、そしてクリスマスだな」
『無駄な三連休だよ、やることもないし』
「まぁ俺は彼女とセックスですけど」
『たまには他のことしてやれよ』
「彼女の親父に会う」
『おぉ、ついに』
「母親はイージーだったけどな」
『そういうもんさ、女側は逆だろうが』
「何で男の母親ってのはこう、彼女に厳しいかね?」
『男女に限らず、色んな界隈で古参がにわかを叩くのとおんなじことだろ』
「そんなもんか」
『将来娘が彼氏連れてきたらどうすんだ?』
「埋める」
『ほらな』