「お前は?」
『ん?』
「ドラマだよ、良いシーンあったか?」
『そもそも男2人が話す話題じゃ無いだろ』
「ジェンダーレスの時代だろ」
『世界中のフェミニストに怒られる開き直り方だ』
「脱線させたがるな、あったのか無かったのか言えばいいんだよ」
『あったよ、良くはないけど』
「どのシーンだ?」
「あったか、そんなの」
『お前はあれだ、直接的なシーンしか観てないんだな』
「説明ヲ求ム!!!!」
「あー」
「あったなぁ。そのシーンが何だ?」
『いや、似てるなぁと思って』
「誰に」
『君』
「そりゃあ光栄なこって」
『褒めてないぞ』
「え?!?!」
『だから似てるって言ったんだよ』
「問題あったかあのシーン」
『嫉妬しろよ、告白されたことに』
「だって、付き合ってんじゃん」
『これだから9年は』
「9年付き合ってから言えよ」
『4年も元カノと同棲しててでもどうすることもできない状況で、あの返しは悪手だろ』
「でも付き合ってんじゃん」
『付き合ってたら安心か?結婚じゃないぞ、いや結婚してても安心じゃないが』
「それだけ信頼してるんじゃん」
『信頼することと嫉妬を見せることは違うぞ』
「…何か」
『何』
「ブーメランか?」
『………』
「俺のせいにすんなよ」
『…いや』
「過去の経験への投影、そこからの自己嫌悪、そして責任転嫁か~~~~」
『珍しく偏差値が高いな』
『何でだろうな、視聴者として田中圭の立場を見ているとバカとしか思えない対応なのに、いざ自分が田中圭の立場だったときは、同じことをやってたんだよな』
「そりゃお前、新垣結衣が主役だからだよ」
『茶化すなよ』
「真面目にだよ、あのドラマは新垣結衣が主役で、新垣結衣を中心に世界が回ってるから、新垣結衣の心境が手に取るように分かる、でも」
『…』
「でも~?」
『現実は相手じゃなくて自分が主役、と』
「よくできました」
「まあ俺はそれでも田中圭の対応をするけどな」
『その心は』
「9年」
『はぁ……』
『運転しながらケータイいじるなよ』
「いやいや待て待て、これは勝ちだぜ、彼女からのライン」
「さっき彼女に、お前まさか俺のこと田中圭だと思ってねえだろうな?って送ったんだよ」
『彼女さんなんて?』
「そっちこそ私のこと新垣結衣だと思ってるでしょ」
『9年だなぁ』
「9年だろ」