「俺ら、何で一緒にいるんだろうな」
シャンプーが切れたから買いに行こうという誘いを受けて、片道15分かかるドン・キホーテに向かって兄から譲り受けた車を走らせる中、彼は言った。
何を言ってるんだろう、自分で誘ったくせに。
「今に限ったことじゃねえよ。今までの話だよ」
変な質問だった。
彼は人気者だ。
街を歩けば誰かしらに出くわして談笑を始める。
大勢でカラオケに行けば流行りの歌を歌って皆を楽しませる。
運動神経も良く、色々なスポーツのサークルに顔を出しているようだ。
身長もスタイルも抜群で、服装も読者モデルじみている。
こっちがしたい質問だ。
何でそんな奴が正反対の自分と一緒にいるのか。
「だからぁ、それが自分でも分からないから聞い…っ!危ねえなぁ!」
前を走る車がブレーキをかけたことに彼は声を荒げた。
彼は運転技術が高いせいか、運転が荒かった。
自分のせいなのに。
大した急ブレーキでもないんだから、もっと車間距離を空ければいいだけだ。
『ドン・キホーテをドンキって略すようなものかも』
「は?」
『ドン・キホーテってさ、ドンのキホーテさんでしょ?いやもっと言えばキホーテのドンさん?まあ何でもいいけど』
「だから?」
『なのに皆ドンキドンキって、変なところで区切ってる、完全なものをわざわざ不完全にして』
「んん?まあ」
『たぶんそんな感じ、一緒にいる理由』
「意味分かんねえ。俺がドン・キホーテでお前がロシナンテってこと?」
無駄に博学で笑ってしまった。
「何でもドンキで買い揃えようとする奴なんざロクな奴じゃねえ」
シャンプーだけのはずだったのに、お菓子やらお茶やらワックスやらも抱えてレジに向かった彼は笑いながら言った。
帰り道、彼の運転は少し丁寧な気がした。